【三.豊富な銀行融資】金融の観点から見ると、日本はこの十数年間かなり豊富な資金を銀行融資によって調達することができました。金融当局の目を盗んで、苦労して証券化のスキームを考え出しても、銀行融資の方がずっと有利な条件であれば、あえて証券化市場を創設しようとは思わないものです。欧米では、金融機関が常に厳しい自己資本規制に直面していたために与信額が制限され、それが原動力となって証券化市場が発展した歴史があります。日本のほとんどの企業は、いまだに間接金融から抜けきれていないのです。間接金融から脱して、証券化による直接金融を目指そうといった動きはまだ日本では見られません。【四.投資家の安定志向】日本人の投資スタイルは、投資商品そのものの価値よりも商品の売り主の信用を重視する傾向にあります。この点も投資物件が生み出すキャッシュフローを重視する証券化商品の仕組みと矛盾するところです。値上がり益はとりたいが、投資リスクは抱えたくないというのが日本人の典型的な投資家像です。「寄らば大樹の影」的な発想が残っているうちは、投資リスクを伴う証券化商品に人気が出るとは思えません。日本の場合は、証券化の技術論よりも日本人のマインドそのものが大きな障害になりかねません。これだけ市場の背景と風土に違いがあれば、単なる外国の物まねだけでは本格的な証券化市場が根づかないことは明らかでしょう。あくまでも、錬金術としてではない本物の証券化-セキュリタイゼーションを目指すべきなのです。